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相続税の不動産評価を解説|土地・建物の計算方法と注意点2025.12.25

相続税の申告を自力で進めようとすると、最もつまずきやすいのが「不動産の評価」です。土地と建物は評価方法が複雑で、路線価図や固定資産税評価額など専門資料の読み取りも必要になります。

本記事では、相続税の不動産評価を分かりやすく整理し、土地・家屋の評価手順、減額要素、時価との違い、申告時の注意点まで解説します。自力申告に挑戦している方はもちろん、途中で不安を感じている方にも役立つ内容です。

不動産評価が相続税に与える影響

相続税の申告では、現金や預貯金よりも、土地や建物といった不動産の評価が税額を大きく左右します。同じ不動産でも評価の仕方によって相続税額が変わるため、まずは「不動産評価が相続税にどのような影響を与えるのか」という全体像を押さえておくことが重要です。

評価額が相続税額に与えるインパクト

不動産は相続財産の中でも評価額が大きく、相続税額を大きく左右する最重要資産です。たとえば同じ土地でも、路線価や地積、形状、利用状況によって評価額が大きく変わり、税額差は数十万円から数百万円に及ぶことも珍しくありません。

相続税は「評価額 × 税率」で算出されるため、評価額が1割変われば税額もほぼ同じ割合で変動。とくに都市部の宅地や広い土地では、ほんの少しの評価差が相続税額に直結します。

このため、不動産評価は自力申告で最も間違いやすく、税務署から指摘されやすいポイントでもあります。

不動産が遺産総額に占める割合の大きさ 

遺産全体の中で、不動産はしばしば過半数を占めます。現金や預金は金額が明確で誤差も生じにくい一方、不動産は評価方法が複数あり、地目・地積・道路状況など確認すべき項目も多いため、遺産総額の確定が難しい資産です。

不動産評価を誤ると、基礎控除額とのバランス、課税遺産総額、さらには相続税額まで連動して影響が広がります。

また、不動産は実勢価格(売却価格)と相続税評価額が大きく異なるケースも多く、相続人同士の遺産分割トラブルの火種となりがちです。正確な評価は円満な手続きの第一歩といえます。

不動産の相続税評価方法

不動産の相続税評価には、土地に用いる路線価方式や倍率方式、建物に用いる固定資産税評価額など、いくつかの決まったルールがあります。

ここでは、相続税の計算に用いられる代表的な評価方法の概要を整理し、自分の不動産がどの方法で評価されるのかを理解できるように解説します。

路線価方式の基本(土地)

土地の相続税評価で最も用いられるのが路線価方式です。路線価とは、国税庁が毎年公表する「その道路に面する土地1㎡あたりの評価額」のことです。路線価図を確認し、地積(登記簿面積)や土地の形状、奥行距離、間口、利用状況などを補正しながら評価額を算出します。

実勢価格(市場価格)よりも低く設定されていることが多く、相続税評価額の基準として幅広く利用されます。評価の途中で用いる補正率や奥行価格補正などは専門性が高く、誤ると評価額が大きく変わるため注意が必要です。

倍率方式の基本(土地)

路線価が設定されていない地域では、倍率方式を用いて土地を評価します。倍率方式では、固定資産税評価額に国税庁が定める「倍率」を乗じて評価額を算出。倍率は地域ごとに異なり、用途地域や地目によっても差があります。

固定資産税評価額がベースとなるため、比較的シンプルな算出方法ですが、地目や利用状況の確認を誤ると評価額に影響が出る点は変わりません。自宅や山林、農地など、対象によって倍率は大きく異なるため、事前の正確な地目判定が不可欠です。

固定資産税評価額を用いる建物の評価

家屋(建物)の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま利用するのが原則です。土地と異なり、建物には路線価や倍率方式は用いず、自治体から送付される固定資産税納税通知書に記載された評価額をそのまま使用します。

ただし、マンションのように土地と建物の持分割合が複雑な場合や、賃貸用物件(貸家)のように評価減が生じるケースでは追加の判断が必要です。

建物の評価は一見シンプルに見えても、利用区分や賃貸状況によって適用ルールが変わるため、自力申告では見落としが起こりやすい部分です。

土地の相続税評価額の計算手順

土地の評価は、路線価図や倍率表、固定資産税の納税通知書など、複数の資料を組み合わせて行います。手順を知らないまま数字だけを追ってしまうと、評価額を大きく誤ってしまうこともあるのです。

ここでは、土地の相続税評価額を自分で確認するための基本的な計算ステップを紹介します。

路線価図を使った計算手順

路線価地域にある土地を評価する場合、まず国税庁の「財産評価基準書」から該当エリアの路線価図を確認。道路に面した路線価(1㎡あたりの価額)を基準とし、土地の奥行距離や形状、間口、角地かどうか、利用区分などを補正して評価額を求めるのです。

評価額=路線価 × 地積 × 各種補正率という形で算出されますが、土地が不整形であったり、間口が狭かったりする場合には補正が必要となり、計算式が複雑になります。

また、地積は固定資産税課税明細書ではなく、原則として登記簿の面積を使用します。路線価方式は正確性が高い反面、自力での計算はミスが起こりやすく、税務署からの指摘も多い部分です。

倍率地域での計算手順

倍率地域では、固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を掛けて土地の相続税評価額を算出します。計算式は比較的単純で、評価額=固定資産税評価額 × 倍率 です。

ただし、固定資産税評価額が数年前の調査に基づいている点、地目が実態と異なる場合がある点には注意が必要です。農地や山林、雑種地などは、用途区分を誤ると評価額が大きく変わります。

また、倍率地域でも利用状況によっては評価減が適用されるケースがあり、とくに貸家建付地などは別途判定が必要です。単純に見える倍率方式でも、正しい評価には専門的判断が求められます。

評価減につながる土地条件(地積・形状・利用状況)

土地の評価額は、単に路線価や倍率を当てはめるだけでなく、土地固有の条件によって減額されることがあります。不整形地や間口の狭い土地、奥行が極端に長い土地、がけ地を含む土地などは、利用価値が制限されるため補正により評価額が下がるのです。

また、貸家建付地・借地権が絡むケースでは、権利関係を反映した追加の評価減が発生します。地積規模が大きい場合にも「地積規模の大きな宅地」として減額評価が適用されることがあります。

これらの判定は専門的で、誤ると大幅な過大申告や過少申告につながるため、注意が必要です。

家屋の相続税評価額の計算手順

家屋(建物)の評価は、土地と比べると一見シンプルに見えますが、マンションや賃貸物件など、物件の種類によって注意点が異なります。ここでは、固定資産税評価額を使った基本的な考え方から、マンションや貸家などのケースまで、家屋の評価手順をわかりやすく整理します。

建物(家屋)の評価は固定資産税評価額が基本

家屋の相続税評価は、土地とは異なり固定資産税評価額をそのまま利用するのが原則です。これは自治体が行う評価が一定の基準に基づいており、建物は築年数や構造、用途によって価値が明確化されているためです。

固定資産税納税通知書に記載されている「固定資産税評価額」がそのまま相続税評価額となります。ただし、登記簿の面積や構造が実情と一致していない場合もあるため注意が必要です。

また、貸家として利用している建物は、賃貸割合に応じて評価減が適用されるケースがあるため、利用状況の確認が欠かせません。

マンションの評価(敷地権・専有面積)

マンションの相続税評価は、建物の固定資産税評価額に加え、敷地(共用部分)の持分割合を考慮する点が特徴です。マンションは「専有部分+敷地権」で構成されており、土地部分の評価額は建物の持分に応じて案分します。

一般的に、路線価の高い地域では敷地権の価値が高く、建物よりも土地部分が評価額に大きく影響することがあります。またマンションは売却時の価格(実勢価格)と相続税評価額の差が大きく出やすく、財産分割時のトラブルにもつながりやすい資産です。

専有面積、持分割合、築年数などを正しく把握し、評価に反映させることが重要です。

賃貸物件(貸家・貸家建付地など)の評価

賃貸物件は、他の不動産と比べて特殊な評価方法が用いられます。建物については、賃貸されている部分に応じて「借家権割合」を反映させ、評価額が減額。

さらに、建物が建っている土地は「貸家建付地」として評価され、土地の利用価値が制限される分、減額評価が適用されます。

賃貸割合や入居状況によって評価額が変わるため、最新の賃貸状況を正しく把握する必要があります。誤った評価をすると、過大評価・過少評価のいずれも税務リスクが高くなるため、専門家によるチェックが推奨される領域です。

相続税評価額の減額要素

不動産の相続税評価額は、必ずしも「そのままの形」で課税されるわけではなく、一定の条件を満たすことで評価額を減らせる場合があります。代表的なものが小規模宅地等の特例や貸家建付地などの評価減です。

ここでは、相続税の負担を軽減し得る主な減額要素を整理して解説します。

小規模宅地等の特例

相続税の節税効果が最も大きい制度の一つが「小規模宅地等の特例」です。自宅(特定居住用宅地等)や事業用宅地など、一定の要件を満たす土地については、評価額を最大80%減額できる非常に強力な制度です。

この特例を適用できるかどうかで、相続税額は大幅に変わります。適用には、同居・別居の別、生計同一の状況、持ち家の有無、居住継続の有無など、細かな条件を満たす必要があります。

制度自体は魅力的ですが、要件判定を誤ると特例が使えず、想定よりも高い相続税額になるケースも少なくありません。

地積規模の大きな宅地

地積規模の大きな宅地とは、一定の広さ以上の土地で、面積が大きすぎることで市場での利用価値が下がる土地を指します。この場合、地積規模の大きな宅地として減額評価が認められることがあります。

具体的には、土地の規模が地域の一般的な宅地と比べて明らかに大きく、分割するにも制約があるような場合などです。評価減が適用されれば相続税の負担が軽くなるため、適用可否の判断は相続税対策の重要ポイントとなります。

ただし、この判定には地域性や市場性、利用状況など複数の観点が絡むため、専門的知識が必須です。

貸家建付地・借地権など権利関係による評価減

不動産の利用状況や権利関係によっては、土地や建物の評価額が大きく下がることがあります。代表的なのが貸家建付地で、賃貸中の建物が建っている土地は、貸家人の権利を考慮して評価額が減額されることがあるのです。

また、借地権が付いている土地や底地なども、土地所有者の利用が制限されるため評価額が低くなります。これらの評価減は制度的に認められているものですが、権利関係の把握や適切な評価には高度な専門性が必要です。

誤った判断をすると過少申告リスクや逆に過大申告につながるため注意が求められます。

相続税評価額と時価の違い

不動産会社の査定額や実際の売買価格と、相続税評価額は必ずしも一致しません。「思っていたより評価が高い(低い)」と感じる背景には、それぞれ異なる算出基準があるためです。

ここでは、相続税評価額と時価・不動産査定額との違いを整理し、誤解しやすいポイントを解説します。

相続税評価額と実勢価格(時価)の違い

相続税評価額は、国税庁が定めた基準に基づき、路線価や倍率を使って計算する“税務上の評価額”です。一方、実勢価格(時価)は市場で実際に取引される価格であり、周辺環境や需要、物件の状態などによって大きく変動します。

多くの場合、相続税評価額は実勢価格よりも低く設定されています。そのため「同じ不動産でも相続税評価では安く見えるのに、売却すると高額で売れる」というケースは少なくありません。

両者の違いを理解しないまま遺産分割を進めると、相続人同士の認識にズレが生じ、トラブルの原因になることもあります。

不動産査定額との違いと誤解しやすいポイント

不動産会社が提示する査定額は、あくまで売却した場合にどの程度の価格になるかの目安であり、相続税評価額とは目的も算出方法も異なります。

不動産査定は市場動向や周辺の成約事例を基に算出するため、実勢価格に近い数値となります。一方、相続税評価額は法令に基づく画一的な評価方法であり、市場性よりも公平性を重視しているのです。

この違いを理解せず、査定額を相続税申告に使用してしまうと過大評価になる場合があり、税務リスクが高まります。「査定額=相続税評価額」ではない点にはとくに注意が必要です。

遺産分割でトラブルが起こりやすいケース

相続税評価額と実勢価格の差が大きい不動産は、遺産分割でのトラブルが発生しやすい資産です。たとえば、相続税評価額は低いものの市場価値が高い不動産を誰か1人が相続すると、不公平感が生じやすくなります。

また、共有名義で相続した場合、管理方針や売却時期などをめぐって意見が分かれることも多く、結果として手続きが長期化することもあるのです。

さらに、相続人の一部が不動産の価値を誤解していると、分割協議が難航しやすくなります。評価額の違いを正確に理解し、適切に説明することが、円満な遺産分割には欠かせません。

不動産相続時の注意点

不動産を含む相続では、評価そのものだけでなく、必要書類の収集や申告期限、税務調査リスクなど、手続き面での注意点も少なくありません。

とくに「自分で申告してみよう」と考えている方ほど、事前に押さえておきたいポイントがあります。ここでは、不動産相続でありがちなつまずきと対策を解説します。

必要書類(登記簿・納税通知書・路線価図など)

不動産を相続する際には、評価に必要となる書類を早めにそろえることが重要です。土地であれば「登記簿謄本」「公図」「固定資産税課税明細書」「路線価図」などが必要となり、家屋については「固定資産税納税通知書」が必須です。

とくに、登記簿の地積と実測値が異なる場合や、地目が実態と一致していない場合は評価に影響が出るため、事前の確認が欠かせません。また、路線価図は国税庁が毎年公表するもので、相続開始年のデータを使用します。

必要書類が不足していると評価が正確にできず、申告期限に間に合わないリスクも生じます。

自力申告で起こりやすい誤り

不動産の評価は専門性が高く、自力申告では誤りが起きやすい領域です。よくある誤りとして、路線価の読み間違い、奥行補正や間口補正の適用漏れ、地目の誤認、貸家建付地の判断ミスなどが挙げられます。

これらの誤りは評価額に大きく影響するため、過少申告・過大申告のどちらも税務リスクにつながるのです。

また、特例の適用判断を誤ると、本来受けられる減額が受けられず、相続税額が高くなるケースも多く見られます。自力での評価が不安な場合は、早めに専門家へ相談することが賢明です。

税務調査で指摘されやすいポイント

不動産に関する税務調査では、評価額の根拠や特例の適用判断がよく確認されます。とくに、貸家建付地や借地権、地積規模の大きな宅地など、評価減が絡むケースは重点的にチェックされます。

また、土地の形状や間口・奥行など、補正率の適用に誤りがあるケースも指摘されがちです。申告内容に疑義がある場合、税務署は現地調査を行うこともあり、その際に評価の誤りが発覚すると追徴課税につながる可能性があります。

正確な評価と根拠資料の整理は、税務調査のリスクを下げる上で不可欠です。

【麻生会計事務所の強み】早い・安い・代表が直接対応

相続税申告を税理士に依頼するか迷っている方にとって、「誰に頼むか」「費用はいくらかかるのか」は大きな関心事です。

麻生会計事務所では、不動産評価を含む相続税申告を、代表税理士が直接担当しつつ、費用面でも依頼しやすい体制を整えています。この章では、当事務所にご依頼いただくメリットを具体的にご紹介します。

代表税理士が自ら担当する安心感

麻生会計事務所では、相続税申告において代表税理士が直接担当し、相談から申告完了まで一貫して対応。

大規模事務所では担当者が途中で変わることもありますが、当事務所では最初から最後まで同じ税理士がサポートするため、状況の共有漏れや認識のズレが生じにくく、安心して任せることができます。

不動産評価は専門性が高く判断も難しいため、経験豊富な税理士が直接対応することは、申告の正確性や迅速性に直結。また、相談しやすい距離感も当事務所の特徴で、初めての相続手続きでも不安を感じさせない丁寧なサポートを心がけています。

地元密着で迅速対応・費用の透明性

麻生会計事務所は地域に密着した事務所として、地元の不動産事情にも精通。土地の評価は地域特性を理解しているかどうかで判断が大きく変わることがあり、とくに地形や利用状況、過去の取引状況など、地域特有の情報が必要となる場面では強みを発揮します。

また、費用についても透明性を重視しており、事前に見積りを提示するため安心して依頼できます。一般的には「遺産総額の0.5〜1.0%」が相続税申告の費用目安と言われていますが、当事務所では0.5%以下に収まるケースも多く、費用負担を抑えたい方にも最適です。

不動産評価に強い事務所としてのサポート体制

不動産評価に強い麻生会計事務所では、土地・家屋・賃貸物件・マンションなど多様な不動産について専門的な評価を行っています。評価の誤りは相続税額に直結するため、適切な評価と根拠資料の整理が不可欠です。

当事務所では、路線価や倍率方式を用いた土地評価だけでなく、貸家建付地や借地権、地積規模の大きな宅地など、評価減が関わる複雑な案件にも対応しています。

相続人同士のトラブルを避けるための説明資料の作成や、分割協議のサポートも可能です。必要に応じて不動産会社や司法書士と連携し、相続手続きを総合的に支援します。

まとめ

相続税の不動産評価は、路線価や倍率、特例の可否など専門判断が多く、申告の中でも最も難しい分野です。少しの計算違いや要件誤認があるだけで相続税額が大きく変わるため、自力で進めるには限界を感じやすい分野でもあります。

不安がある方や正確な評価が必要なケースでは、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

麻生会計事務所では、丁寧で迅速なサポート体制を整えておりますので、相続でお困りの際はお気軽にご相談ください。



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